最近、モバイルWiFiルータのニーズが高まっている。その動機になっているのが、個人が所有するデジタル機器の増加だ。デジタル機器はインターネットに繋いで初めてその実力を発揮する。PC、iPhoneやXperiaに代表されるスマートフォン、iPad、WiFi対応のNINTENDO DS、PSP、ウォークマンと数えれば切りがない程、インターネット接続を必要とするデジタル機器が増加している。また、これまではPC、iPhone、Xperiaと所有する機器毎に3Gの定額データプランを契約して使うのが一般的だったが、これをやってしまうと毎月の通信料金が大変なことになってしまう。そこで複数のインターネット接続を必要とするデジタル機器を持つユーザからWiFiルータで3Gの定額データプランを一本化する流れが出てきている。
NTTドコモのポータブルWi-Fi(バッファロー製)、b-mobileのWiFiルータなど、モバイルWiFiルータに特化した機器から、既存の携帯電話にWiFiルータの機能を追加したモデルも登場している。そして、これを積極的に進めているのはNTTドコモだけである。b-mobileもNTTドコモの回線を借りてMVNOとして提供している。
NTTドコモは自らの強みである通信エリアの広さ、回線速度の品質、回線許容量というインフラを全面に押し出し、それを売り込むために用意したのが3GのWiFiルータの提供だ。これをやられてしまうと、auもソフトバンクモバイルも太刀打ちできない。auは通信エリアこそ広いが回線速度の品質の面でNTTドコモ、ソフトバンクモバイルに劣る。ソフトバンクは回線速度の品質の面でauに少し勝るかもしれないがそれ以外はNTTドコモ、auに到底及ばない。そこでauはUQコミュニケーションズと手を組み、CDMA2000の3GとWiMAXの両方が使えるデュアルデータ通信カードを準備している。まだ発表はされていないが、モバイルWiFiルータも同じような形で出してくると思われる。ソフトバンクモバイルはイー・モバイルと組み、データ定額の部分はEMOBILEの回線を使うことで自社の3Gネットワークへの負荷がかからないように考慮している。イー・モバイルのポケットWiFiをベースにしたモバイルWiFiルータをソフトバンクモバイルも提供を開始した。
NTTドコモがWiFiルータを提供することで一番影響を受けるのはソフトバンクモバイルとイー・モバイルだと思う。ソフトバンクモバイルはiPhone、iPadを提供しているが、これらを使うユーザの中にはソフトバンクモバイルの通信エリアに満足していないユーザが多くいる。また、満足していてもiPhoneとPCを持っているとそれらをひとつの3Gのデータ定額プランで利用できるNTTドコモのポータブルWi-Fiはとても魅力的に映るはずだ。イー・モバイルは通信速度の品質は高いものの、通信エリアに大きな問題を抱えている。都市部ではそこそこ使えるようになってきているが、東京でも通信エリア内であっても急に速度が落ちたり、全く接続できなくなったりすることがある。大事なメールを送ろうとした時に繋がらなくなった時のショックは大きい。NTTドコモだとこういうことがないのでビジネスユーズだとやはりドコモにしようということになる。auはそもそもデータ定額を始めたときに通信速度を制限し過ぎた影響でほとんどユーザを獲得できていないので影響がないに等しい。ただし、今後、インフラが重視されるようになってくると今の通信速度制限を撤廃しない限り、auに未来はないと思う。
当面、WiFiルータの競争ではNTTドコモが優位に立ち続けるだろう。それにau、ソフトバンクモバイルが太刀打ちするためには次の方法しかないと思う。
auの場合はCDMA2000の3Gデータ通信時の速度制限を撤廃し、UQコミュニケーションズのWiMAXとのデュアルデータ通信端末にすること。これで都市部はWiMAXの高速通信が使え、田舎や山間部ではCDMA2000の3Gが使えて便利になる。
ソフトバンクモバイルの場合は自社回線の完全データ定額化に踏み切るか、イー・モバイルとのデュアル端末で都市部はイー・モバイルのインフラを活用し、イー・モバイルのエリア外はソフトバンクモバイルの3Gでデータ定額を実現すること。田舎や山間部で多少エリアに不安は残るがほとんどの人は問題なしと感じてくれるはずだ。
auもソフトバンクモバイルも早急にこれらの手を打たないとNTTドコモに大きく遅れを取ってしまう。そして、ソフトバンクモバイルの場合、iPhone、iPadを独占的に日本で販売しているが、蓋を開けたら3GはNTTドコモのWiFiを使われて通信料が稼げないという状況に陥り、iPhone、iPadの販売コストが通信料を上回ることにも成りかねない。今後、更に激化していく競争で生き残っていくためにauとソフトバンクモバイルは大きな英断を下す時期に来ていると思う。